読んだ論文のメモ。Failure of tactile contact to increase request compliance: The case of blood donation behavior

今回も接触の話だけど、接触がもたらす向社会的行動は観察されなかったよ、という研究。論文誌自体も仮説が支持されなかった研究を中心に採択する、ちょっと変わった方針の様子。

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タイトル:
Failure of tactile contact to increase request compliance: The case of blood donation behavior

論文誌名:
Journal of Articles in Support of the Null Hypothesis, 2011.

著者:
Nicolas Guéguen, Farid Afifi, Sarah Brault, Virginie Charles-Sire, PM Leforestier, Anaëlle Morzedec, Elodie Piron.

これまでの課題:
接触行動が向社会的行動をもたらすことは広く研究されているけど、もたらされる行動の多くは日常的な行動の延長だったり、本人にとって負担の少ない行動がほとんど。それに対して、献血のような、身体的に負担の大きい向社会的行動を接触行動でもたらすことが出来るかどうかについては、これまで明らかにされてこなかった。

課題を解くために何をしたか:
実験者が被験者に直接献血の依頼をする状況で、接触行動があるかないかで献血行動に差が出るかを検証した。

実験と結果の概要:
上述のように、2条件の比較。条件は被験者によって分かれており(被験者間比較)、接触あり条件は141名、接触なし条件は140名とかなり多めの被験者数で検証。評価項目は2つで、1)口頭で献血に同意したかどうか、2)実際に献血を行ったかどうか、となっており、条件間で有意な差は見られなかった。すなわち、接触行動は献血という向社会的行動を引き起こすことは出来なかった。

仮説が検証できなかったことを前提とする論文だけあって、様々な議論が行われている。これまでの説得や向社会的行動に関する研究でも献血行為を引き出すことが出来なかったようで、日常的に行う行動に関する向社会的行動や、本人にとって負担の小さい向社会的行動は接触によって引き出すことが出来るが、献血のような負担の大きい向社会的行動は引き出すことが出来ないのではないか、と議論している。

以下は個人的な感想で、論文中に言及されたものではないのであしからず。

感想:
たしかに、チップを払うのと献血を行うのでは心理的・身体的負担の違いが大きいので、ちょっと触れるぐらいでは効果が無いかもしれない。一方で、これまでの研究は主にある瞬間、少し触れるだけの刺激が提示されていることがほとんどなので、長期的に文脈を考慮して何度も繰り返し触れることで、負担の大きい向社会的行動を引き出すことが出来るのかもしれない。

どんな論文を書くときにReferするとよさそうか:
接触がもたらす向社会的行動に関して論文書くなら、こういう研究もありますよ、と紹介しておくと読者の人は興味持ってくれそうな気がする。

オリジナルのPDFはこちら

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