読んだ論文のメモ。Keep in touch: The effects of imagined touch support on stress and exploration

今回も接触の話。恋人などの親密な人との触れ合いが身体的・精神的に様々なメリットをもたらすことはよく知られているけど、この研究はその行為が想像でも有用なのか、を検証している。ロマンチックな研究である。

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タイトル:
Keep in touch: The effects of imagined touch support on stress and exploration

論文誌名:
Journal of Experimental Social Psychology, 2016.

著者:
Jakubiak, Brittany K, Feeney, Brooke C

これまでの課題:
恋人などの親密な人との接触行為は、ストレスへの体制を強化したり、血圧を安定させたり、ホルモン分泌を促したりするなど、様々な良い効果をもたらすことが多くの研究で調べれられている。しかしながら、接触行為を想像するだけでもそのような効果がもたらされるのか、は明らかになっていなかった。

課題を解くために何をしたか:
物理的刺激(氷水に手を浸す)と精神的刺激(ストレスフルなタスク)を被験者に与える際に、恋人などの親しい人に触れられながら元気づけられる様子(例えば肩をマッサージするなど)をあらかじめ想像してもらうことで、刺激への耐性に変化が起きるかを検証した。

実験と結果の概要:
物理的刺激を与える実験と、精神的刺激を与える実験の2つを実施。どちらも条件は4つで、1)親密な人からの接触による支援を想像して記述、2)親密な人からの発話による支援を想像して記述、3)親密な人の外観の特徴を記述、4)プリンターの外観と使い方を記述、いずれかを実行してから刺激提示という流れになっている。

物理的な刺激の実験には95名の被験者が参加しており、評価項目は2つ。1つは、最初の刺激提示後、より強い刺激にチャレンジするかどうか。もう1つは、時間経過による痛みの主観的変化。結果としては、男性は接触想像よりも外観想像の方がより強い刺激にチャレンジする傾向にあった。女性は、接触想像が他のすべての条件より強い刺激にチャレンジする人が多かった。痛みの主観的評価に関しては、男女どちらも接触想像が他のすべての条件よりも痛みを感じにくい、という結果になった。

精神的な刺激の実験には139人の被験者が参加しており、評価項目はこちらも2つ。1つは、タスク実行中に感じたストレスの度合い。もう1つは、タスクに集中できたかどうか。結果としては、男女ともに接触想像が他のすべての条件よりもストレスを感じにくく、かつタスクに集中できたことが示された。

以下は個人的な感想で、論文中に言及されたものではないのであしからず。

感想:
発想が素敵な研究であるとともに、実験のタスクが(この分野ではよく利用されているとはいえ)生々しくてその対比が面白い。ちなみに被験者の選定条件も、「同一人物とロマンティックな関係(恋人という理解でいいのだろうか)を少なくとも数ヶ月継続したことがある」という内容であり、親密な関係の人がいない人は実験にそもそも参加できないし、接触を想像することがもたらす恩恵があるのかどうかさえ不明である。それはさておき、親密な関係の人がいるのであれば、その人からの接触を想像するとストレス耐性が付くとのことなので、一般の人々が利用しやすい知見である。

どんな論文を書くときにReferするとよさそうか:
人と人に限らず、人とロボットが接触を行う研究において、接触はたとえ想像したものであってもこんなメリットがありますよ、という流れで紹介すると議論が広がりそう。

オリジナルのPDFはこちら

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